
花粉症の対策は万全ですか?
花粉症は日本人の4人に1人がかかっている症状で、一度発症すると治りにくいため今後も患者数は増えていくと言われています。今まで花粉症にかかっていないから大丈夫という方も油断大敵です。花粉症は、ある時突然発症し、一度発症してしまうとその後は毎年症状が出ることも珍しくありません。
この現代病ともいえる花粉症にどのように付き合っていけば良いのか、予防から治療まで解説していきます。
花粉症の典型的な症状には以下のようなものがあります。
- 鼻水
- 鼻づまり
- くしゃみ
- 鼻のかゆみ
- 目のかゆみ
花粉の時期と一致した発症
また以下のような病歴を伴う事があります。
- アトピー性皮膚炎
- ぜんそくなど
花粉症は時期によって飛散する花粉の種類が異なります。
関東地域の場合は、以下のような花粉の飛散が認められます。

鼻炎症状を認めた場合は以下の疾患や要因を念頭に診療します。
- アレルギー性
- 季節性
- 通年性
- 季節性増悪を伴う通年性
- 慢性特発性非アレルギー性
- 血管運動性
- NARES
- 急性コリン作動性
- 味覚性
- スキーヤー・ジョガー鼻炎(寒冷刺激性鼻炎)
- 薬剤性
(αアドレナリン作動性鼻閉用、
血管収縮スプレー薬、コカイン、
目薬、ピル、降圧薬、フェノチアジン系) - 内分泌性
- 妊娠
- 甲状腺機能低下症
- 末端肥大症
- 機械的・解剖学的閉塞
(腫瘍、ポリープ、Wegener肉芽腫、
サルコイドーシス、異物) - その他
(脳脊髄漏、萎縮性、感染性)
花粉症に多い疾患
花粉症の診療では特に、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎の3つが多いとされています。
鼻のかゆみ、くしゃみがひどい アレルギー性鼻炎
症状は鼻のかゆみ・くしゃみが顕著です。鼻づまり・鼻水も伴います。
鼻水では好酸球が多く、血液検査ではアレルギー反応が陽性となります。
鼻づまり、鼻水がすごい 非アレルギー性鼻炎
好酸球症候群を伴う非アレルギー性鼻炎(nonallergic rhinitis with eosinophilia syndrome : NARES)があります。アレルギー性鼻炎と違って鼻のかゆみ・くしゃみが目立たず、鼻づまり、鼻水が顕著です。鼻水では好酸球が多いですが、血液検査ではアレルギー反応は陰性です。治療薬はステロイド点鼻液が有効です。
好酸球も多くなく、血液検査でもアレルギー反応が出ない 血管運動性鼻炎
患者さんは10代以降に発症するのが典型的ですが、もっと低年齢で血管運動性鼻炎になることもあります。症状は非アレルギー性鼻炎と同じで、鼻の痒み・くしゃみが目立ちません。血管運動性鼻炎では鼻水に好酸球が多くありません。血液検査ではアレルギー反応は陰性です。
治療薬はアレルギー性鼻炎・非アレルギー性鼻炎と違って、ステロイド点鼻液は効かず、抗ヒスタミン剤が有効のことがあります。血管運動性鼻炎は3つの中で治りづらい疾患となります。
花粉症治療の流れ
保険診療で使用するお薬の処方例
保険診療では、例えば以下のようなお薬で治療を行います。
処方例 | 鼻漏 | 鼻閉 | くしゃみ | 痒み | 眼症状 | |
---|---|---|---|---|---|---|
経口抗ヒスタミン | アレグラ | ++ | ± | ++ | ++ | ++ |
経口抗ロイコトルエン | オノン、 シングレア、 キプレス |
+ | ++ | + | + | + |
点鼻抗ヒスタミン | ザジテン | + | ± | + | + | |
点鼻ステロイド | フルナーゼ | +++ | +++ | +++ | +++ | + |
点鼻血管収縮薬 | ナーベル | +++ | ||||
点鼻抗肥満細胞薬 | インタール | + | + | + | + | |
点眼抗肥満細胞 ・抗ヒスタミン |
パタノール | ++ |
他に症状に応じて漢方処方も行います。
花粉症治療で注意する点
原因となる抗原回避(ハウスダスト、ダニ)、使用中のお薬の変更等も検討していただきます。
抗原回避
- 防ダニ・ホコリの枕・マットレスカバー
- 空気清浄フィルター付き掃除機の購入
- 布製ソファの除去等
使用中のお薬の変更
- 血管収縮スプレー薬
- コカイン
- 目薬
- ピル
- 降圧薬
- フェノチアジン系等

ノイロトロピンはワクシニアウイルスという安全なウイルスをウサギの皮膚に注射して、炎症を生じた組織から抽出分離した非蛋白性の活性物質を含有する薬剤です。
これは疼痛を軽減する事が分かっており、慢性的な腰痛、肩こり等に従来使用されていました。
抗体置換法ともいわれ、肥満細胞や抗体受容体を占拠することにより、ハウスダストやダニ、食物抗原の抗体が抗体受容体に結合できにくくなります。この作用により、花粉症の諸症状(くしゃみ、鼻水、鼻の違和感、目の痒みなどの主な症状に効果があります。
また長期に使用しても副作用がほとんどないのも特徴となります。
目の周りなどや湿疹・じんましんといった全身の皮膚の痒みにも効果が認められます。
各種の薬剤(抗アレルギー薬、ビタミン剤など)と併用しても効果を打ち消し合う事もありません。ただし効果には個人差があるために単独治療は難しく、実際は補助的な治療という位置づけとなります。
ノイロトロピンは皮膚炎に対する有効性は58%、アレルギー性鼻炎に対する有効性は63%と報告されています。
2016年度は、新規患者様のヒスタグロビン注射の受付を行いません。
ご了承のほど、よろしくお願いいたします。
ヒスタグロビンは体内でアレルギー反応をおこすとされている「ヒスタミン」への抗体となり、アレルギー反応でヒスタミンが生じても反応を抑える事が出来ます。慢性的な花粉症上でお悩みの方には非常に有効であると考えられています(効果は個人差があります)。
ヒスタグロビン注射は非特異的減感作療法といわれ、いずれかのアレルギーの原因に関係なく、アレルギー疾患を体質から改善する治療です。ステロイド注射とは違い副作用が少ない事が特徴です。このヒスタグロビンは昭和42年発売以来、一度も感染症を起こしたことのない、安全性の高いものです。
ヒスタグロビン注射の有効性
各疾患への有効性を紹介します。
アレルギー性鼻炎・血管運動性鼻炎に67%の効果!
1回の投与で67%の有用率が認められ、くしゃみや鼻水の改善が認められています。また1回の治療で効果不十分な場合に2〜3バイアル投与の治療で60%の有用率が認められています。
アトピー性皮膚炎、湿疹・皮膚炎群に58%の効果!
1回の投与で止痒効果に関しては58%の有用率、効果不十分な場合に2〜3バイアル投与の治療で54%の有用率が認められています。
じんましん(慢性じんましんを含む)に72%の効果!
1回の投与で72%の有用率、効果不十分な場合に2〜3バイアル投与の治療で51%の有用率が認められています。
ヒスタグロビン注射の治療スケジュールと効果
週に2回程度の頻度で3週間、合計6回の注射を行います。
通院が困難な場合、週に1回で3週間、合計3回となる場合もあります。
これらを1クールとして、上記で効果が不十分な場合はもう1クール追加します。
これで3〜4か月間のアレルギー反応を大幅に抑えることが期待できます。
ヒスタグロビン注射の注意点
- 効果には個人差があります
- ヒスタグロビンは生物由来製品で、ステロイドと違い、副作用が非常に少ないです
まれですが、眠気、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐などがあらわれる事があります - ヒスタグロビンは国内献血由来の血液を原料とする、特定生物由来製品に分類されます
- 使用すると輸血した事と同様となり、他者へ自身の血液を供与(献血)する事が出来なくなります
- 激しい喘息発作がある時、妊娠中、妊娠の可能性がある時、衰弱が著しい方はこの薬剤を使用できません
- 生ワクチン(麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘の効果獲得に対しても影響を与える可能性があるため、ワクチン接種から最低2週間はあける必要があります
- ヒスタグロビン注射を行ってから生ワクチンを接種する場合は最低3〜4ヶ月は期間を空ける必要があります
他の注射剤としてはデポスステロイドの注射がよく行われていますが、体への負担が大きいために当院では採用しておりません。
自費診療ではボトックス治療とサプリメントによる治療も行っておりますので、ご検討ください。